式根島 海洋酸性化の自然の実験室

© Tara au milieu des glaces en Arctique

【4月●日 AFP】絶滅の危機がささやかれている世界のサンゴ礁だが、彼らが生き残るためのカギは、日本の小さな火山島の海にあるかもしれない──世界の海を調査している科学者らが伊豆諸島の海に注目している。

 

フランスが主導する科学調査のためのスクーナー船「タラ号」に乗船した研究者らにとって、伊豆諸島の式根島の海底は「生きた実験室」だ。彼らは、気候変動による損傷作用からサンゴを守るための手がかりを探している。

 

サンゴ礁は、世界の海洋面積のわずか0.2%を占めるにすぎないが、これを生息場所とする動植物種は30%に上る。サンゴ礁は、これらの生物に食物を与えるだけでなく、天敵から身を守る手段も提供している。

 

調査コーディネーターを務めた筑波大学のシルバン・アゴスティーニ★助教は「サンゴ礁の消失は、恐ろしい結果を招くだろう」と警告を発した。

 

式根島の一部の入り江では、海底火山から噴出した二酸化炭素(CO2)が大量に海水に溶け込み、海水のアルカリ度を低下させている。この海の状態は、世界のCO2排出が2100年まで野放しで続いた場合に予想されるものと同等と考えられている。

 

Station longue arctique

 

温室効果ガスの排出、または海底火山の活動に起因するCO2の蓄積は、海水温度を上昇させ、酸性化として知られる過程で海水の性質を化学的に変化させる。

 

研究者らによると、東京の南160キロに位置する式根島の一部の海域では、サンゴを含む海洋生物が、通常よりアルカリ度の低い海水の中でどのようにして存続できるかを垣間見ることができるという。

 

オーストラリアにある世界最大のサンゴ礁で世界遺産にも登録されているグレートバリアリーフ(%%Great Barrier Reef%%)が危機的状況に直面している中、北限海域にある日本のサンゴ礁は、海洋生物に関する知識を増強する重要なデータを提供するものとなっている。

 

科学者らは今月、グレートバリアリーフが海面温度の上昇に起因する白化現象によって深刻な危機にさらされていることを明らかにした。この現象は、ストレスを受けたサンゴが組織内に生息し、養分を供給する藻類を放出することで生じる。

 

グレートバリアリーフでは、今年も大規模な白化現象が、昨年に続き確認されており、科学者らは2年連続で白化したサンゴの回復について「見込みゼロ」と厳しい見方を示している。

 

Plancton

 

■大きな問題

 

フランスの高名な研究機関、高等研究実習院で上級講師を務めるマギー・ニュグ氏は、2016年5月に同国を出発したタラ号の船上でAFPの取材に応じ「20年間にわたってサンゴを調査しているが、現在目の当たりにしているのは大規模な減少だ」と語った。

 

そして「カリブ海と太平洋のサンゴの面積は、50~80%の減少がみられる。これは大きな問題」と続けた。

 

タラ号に乗船している6人の研究者らは、生存に適さないと思われる式根島の環境で、サンゴ、プランクトン、海草/海藻、魚などを含む海中の生態系がどのようにして存続しているかを調べたいとしている。

 

同じく式根島にあるが、その状況が大きく異なる別の入り江との初期の比較調査では、サンゴはアルカリ度の高い海水中の方がはるかに状態が良好であることが示唆されている。

 

アゴスティーニ助教は「これらの比較的高緯度の海域が、海洋生物の避難所として機能できることに期待したい」と述べるも、「海洋酸性化をめぐる問題はまだ解決しておらず、ここ式根島にも存在している」ことを指摘。「この自然の実験室で、その答えを見つけたい」とした。

 

他方で、気候変動のペースが人的活動によって加速されると、生物はそれに合わせて適応するのが難しくなるとニュグ氏は指摘する。

 

「地球がこれまで比較的安定な条件の下で進化してきたことが、生物や動物の適応を可能にしてきた」「だが今や、人類がそのペースを、おそらく自然の速度計を振り切る速さにまだ加速させている」と現在の状況を説明した。

(c)AFP/Ursula HYZY

 

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