プラスチックの海

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半世紀以上前から、プラスチック材は私たちの日常生活に溢れています。それは海洋においても同様で、海洋汚染のうちの大多数を占めています。クストー船長が愛した沈黙の世界は少しずつプラスチックの世界に変わりつつあるのです。

企 業にとっては、プラスチックは天の恵みです。製造に費用がかからないだけでなく、丈夫で軽く腐食に強く、多くの化学製品に耐えるといった理想的な特長があ るためです。さらに添加物、たとえば不燃化物質を加えるだけで、その可能性はほとんど無限です。2000年代の後半に軽い減少傾向を示したことを除けば、 ここ数十年の間プラスチック材の生産が増加を続けていることは全く驚くにあたりません。20世紀中頃ごくわずかでしかなかったプラスチックの生産量は、現 在では毎年3億トン近くにものぼり、建設、自動車、電子工業などのほぼすべての産業分野で使われています。そして忘れてはならないのは、プラスチック材の 半分近くを占めている梱包材です。つまり半分近くがごく短期間の使用のためだけに生産されているのです。

ごく短時間しか使用されない梱包材

プ ラスチックには驚くべき強度があり、耐久性に富んでいます。数十年、ときには数百年もの時間に耐えることができます。そしてこのプラスチックが注意深く分 別されなかったり、リサイクルの対象とならなかったりした場合(フランスでは現在プラスチックの20%しかリサイクルされていません)、必然的に自然、と りわけ海に入っていきます。毎年海洋に千~2千万トンのあらゆる種類のゴミが流れ込んできますが、そのうちの大多数はプラスチックです。特に表層では浮遊 物のうちのほとんどすべてがプラスチックとなっています。ある種の海洋ゴミは海の活動から発生しているものの、海に流れ込む70~80%の廃棄物は陸か ら、特に川を伝って入ってきます。

12 plastique recolte dans le 7e continent 2011- credit A.Peyrot Tara Expeditions

海に入ると表層に浮くプラスチック廃棄物

海流により、非常に 長距離にわたって運ばれるプラスチック廃棄物は、地球の果てまで流されていきます。いくらかは沿岸に流れ着きますが、それ以外は数千kmにわたる海上の巨 大な渦巻きである環流に運ばれます。1990年代、北太平洋上にあるこれら還流の1つで、海洋学者チャールズ・ムーアが自ら「プラスチック大陸」と呼ぶも のの正体を明らかにしました。この言葉はとても印象的です、がそれでも現実のほんのわずかな部分しか伝えていません。海洋上に出現したゴミの島というには 程遠く、むしろ浮遊ごみが高密度で集まったものです。「マイクロプラスチック」すなわちペットボトルやビニール袋などの梱包材といった大きな廃棄物もあり ますが、特に多いのは、マイクロプラスチックと呼ばれる5mm以下の小片です。環流はこのように、プラスチックがゆっくり壊れることによってできた極小の プラスチック破片からなるスープを作っています。

マイクロプラスチックは大洋上の環流に留まらず、地球上どこでも見られます。地中海は1平 方kmあたり11万5000片と、世界でも最も高濃度のマイクロプラスチック汚染の影響を受けています。この課題は科学者の世界で長い間無視されてきまし た。大きな浮遊物と違って目につきにくいマイクロプラスチックを対象とした研究が行われるようになったのは、ここ数年のことです。この現象の広がりや分 布、特に環境への悪影響は、まだほとんど知られていません。多くのことがやり残されているとしても、タラ号は地中海での6カ月の探査中、マイクロプラス チックについて、そしてマイクロプラスチックとプランクトンの生態系との関係について、できる限り多くの情報を集めることによって、この研究に貢献するこ とを目指しています。

ヤン・シャヴァンス