マイクロプラスチック: 不幸な海

© Tara Expeditions Foundation

海はゴミ捨て場になっています。海運活動から出されるゴミもありますが、海洋に投棄されるゴミの80%は陸地から、下水道や河川、風、嵐によって運ばれてきます。しかし、特に問題なのは漂流するゴミの大部分がプラスチックだということです。

 

海はゴミ捨て場になっています。海運活動から出されるゴミもありますが、海洋に投棄されるゴミの80%は陸地から、下水道や河川、風、嵐によって運ばれてきます。しかし、特に問題なのは漂流するゴミの大部分がプラスチックだということです。

プラスチックで汚染された海はよく「7番目の大陸」と呼ばれます。プラスチックは、海面だけでなく深海も含め、海という海すべてを漂流しています。遠い場所で起きている目に見えない環境災害ですが、非常に重大で大変有害です。廃棄物による海洋汚染は、製造品・加工品問わず、海洋や海岸に廃棄されたり流されたりしてきた一切の固形物質によって引き起こされています。

 

Microplastiqueこのような破片が今日、海洋の至る所にある。 © N・パンシオ/タラ号プロジェクト

 

化粧品、歯磨き粉、洗濯機

毎年、海には1,000~2,000万トンのゴミが投棄されており、80%がプラスチックです。さらに、過去10年で世界のプラスチック材料の生産量は容赦なく増え続けており、2012年には2億8,000万トンに達しています。どれほどの量が海に吸収されたのかは全く想像もつきません。今日、海はゴミ捨て場と化しています。太陽光や酸化、海流の作用が重なり合い、プラスチックゴミの一部がマイクロプラスチックと呼ばれる、大抵5mmにも満たない微小粒子に分解されます。

マイクロプラスチックは合成ポリマーで、通常裸眼では見えません。大きさや形、色、密度、化学組成、出所などが異なる多様な粒子が含まれています。一次マイクロプラスチックと呼ばれる微小粒子形態であれば、化粧品や歯磨き粉、洗濯機、産業用品(プラスチックの粒、プラスチックボール、織物繊維、塗料)など様々な形で海洋環境に侵入する可能性があります。

大きめのプラスチックゴミの分解によって生じる二次マイクロプラスチックは一次マイクロプラスチックよりはるかに多量です。微粒子やナノ粒子の環境放出量が増え、破砕するプロセスが時とともに無限に増えているためです。消え去るまでには数百年とかかるでしょう。サンプルを収集しこの破片の濃度を測定するために、数多くの調査が世界中で実施されてきました。その結果、海面・深海問わず、海岸や入り江、外洋、さらには赤道から極地に至るまで地球の最も辺鄙な場所であっても、二次マイクロプラスチックは海洋環境中のどこにでもあることがわかっています。

 

海面の88%がこのような微小粒子で汚染されていると推計されています。マイクロプラスチックはほとんどが漂流ゴミのため、海流や風で流され、海面に蓄積していきます。さらに、地球の自転により渦(旋流という言い方が広く知られています)が海で発生し、無数のプラスチック破片を集めて巨大な汚染のたまり場を作り出します。プラスチックで覆われた巨大な海域がこれまでに見つかっていますが、とりわけ印象的なのが1997年に発見された北太平洋の「ゴミベルト」です。深さ30メートル、広さ340万平方キロメートル(フランスの国土面積の約6倍)に達するこの海域には、プランクトンの10倍のプラスチックが存在します。この「プラスチックスープ」を、魚や食物連鎖の最下位にいるプランクトンまでが摂取してしまっているのです。

 

SPENCER_LOWELL_TARAタラ号地中海探検プロジェクトにて、マイクロプラスチックのサンプルを調査中。 © スペンサー・ラウエル

 

有毒物質

太平洋と異なり、地中海では恒久的なゴミベルトは見つかっていません。しかし、地中海は世界で最も汚染された水域の1つであり、マイクロプラスチックの濃度は北太平洋と同レベルです。海面には約2,500億個のプラスチック粒子が漂流しており、重量500トン相当と推計されています。

プラスチックゴミは脅威として認識され、汚染物質とみなされており、今世紀に入りさらに重要な問題となりつつあります。プラスチックは炭素、ケイ素、水素、酸素のほか石油、石炭、天然ガスの派生物など、有機物質と無機物質の両方からのポリマーが連鎖したものです。現在広く使用されているプラスチック物質としては、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリエチレンテレフタラート(PET)があり、全世界の生産量の90%を占めます。これらのプラスチックは全て粒子の特性を有しています。不活性のものもありますが製造過程で添加された物質を含む場合もあり(可塑剤、充填剤、着色料、難燃剤、安定剤など)、製品の耐久性向上、劣化防止や防火性向上が図られています。危険なのは、このような物質が環境中に入ると、可塑剤として広く用いられるフタレート・ビスフェノールA(BPA)などの化学物質を放出する点です。さらに悪いことに、プラスチックは残留性の高い有機汚染物質(POPs)をまるでスポンジのように吸収するのです。POPsは殺虫剤、燃焼生成物、工業用化学物質など、人間の活動により発生する複雑な分子です。

 

生物との相互作用

このような有害物質は生分解耐性が非常に強く、長期間有害性を保ちながら環境中に残留します。マイクロプラスチックの表面に生息する生物がこれらの汚染物質を吸収し、またプラスチックに含まれる添加剤が海洋環境中に放出されます。その結果、有毒物質は食物連鎖の全段階で生体組織内に蓄積され(生物濃縮)、人間の体内に取り込まれます(生物蓄積)。

添加剤の中には内分泌攪乱物質が含まれ、その生物多様性や食の安全性、人間の健康に対する悪影響についてはまだ解明が始まったばかりです。海洋を漂流する大きなプラスチック片は海鳥や亀に直接影響を与えていますが(プラスチック袋内での窒息や獲物と間違えて誤食し、毎年10万体以上の海洋生物が死んでいる)、マイクロプラスチックははるかに複雑なタイプの汚染を引き起こしており、目に見えないため対策が困難です。また非常に小さいため、毒素を吸収したままムール貝やカキなど、あらゆる種類の生物が摂取される可能性があります。食物連鎖の中に入り込みやすいのは明らかです。

疎水性、生物非分解性のプラスチックは、細菌や藻、菌類などにコロニー化されてしまいます。海流によりプラスチックが何千キロも運ばれれば、侵入生物種や病原体を広げるいかだのような役割を果たし、生態系全体に混乱をもたらす恐れがあるのです。

 

マリア・ルイザ・ペドロッティ
ヴィルフランシュ=シュル=メールの海洋観測研究所研究員(CNRS/UPMC)