タラ号、アジア・太平洋へ: サンゴ礁の本質

© Lauric Thiault

広大な太平洋やアジア地域でのサンゴ礁調査を行うと、なぜサンゴ礁の中でも危機にさらされている種と繁茂している種があるのか、知りたくなると思います。要因は何であれ、気候と人間活動の相互作用はサンゴに悪影響を及ぼしています。

芸術的ともいえる外見を持ち、大変美しい樹木状の枝分かれした果物のような共生生物。海面・深海を問わず海で生息・成長し、もっとも多様な海洋生物の生息地。それがサンゴです。「本当は、サンゴは複数形で語るべきなのです。」と説明するのは、フランスのサンゴ専門家でペルピニャン大学CNRS研究ディレクター兼フランス領ポリネシアの研究センター・環境監視団体CRIOBE所長のセルジュ・プラーヌです。「なぜならよく見ると、一番よく知られているサンゴのほかに、石灰構造を作り出すサンゴ藻、そしてヒドロ虫類(アナサンゴモドキとも呼ばれる)という本物のサンゴではなく変形したクラゲの一種と、主に3種類からサンゴ礁が作られていることがわかるからです。サンゴとヒドロ虫類は、イソギンチャクの一種であるサンゴと、サンゴが成長できるようエネルギーを作り出す単細胞の藻が共生しているのと同じようなものです。つまり、サンゴ礁の形成プロセス全体を知るカギは、食物が極めて少ない海域であろうと、イソギンチャクもどきの生物と藻の間にあるこの共生関係にあるのです。」

 

Corail非常に敏感な生物、サンゴ礁。 © A・アミエル/カヒ・カイ/タラ号プロジェクト

 

生きた尾根

全世界の環礁に生息するこの3種類の生物は、海面のわずか0.02%にすぎませんが、数多くの小群が混じりあって存在しています。「1,000種類近くあるサンゴの中には、数百万年前に出現したものもあります。熱帯雨林と同様に、これらのサンゴも、海洋生物の約4分の1にものぼる生物多様性の宝庫というべき生息地を作り出しています。」とセルジュ・プラーヌが付言します。

サンゴ礁を単なる興味深い地形と捉える時代は終わりました。サンゴは広大な生きた尾根を形成しており、種類を問わず正真正銘の生物なのです。誕生し、狩りをし、生殖し、死んでいきます。「クラゲと同じくサンゴも刺胞動物で、チクチクした(とげのある)細胞により、通過するプランクトンや、小さなエビや魚の稚魚に至る小さな生物に衝撃を与え、動けなくして食べることができます。」と、ヴィルフランシュ=シュル=メールの海洋学観測所に勤務するCNRS研究長クリスチャン・サルデが説明します。

 

Corail-sbolletサンゴ表面。1,000種近くあるサンゴの中には、数百万年前に出現したものもある。

 

サンゴのストレス要因

タラ号海洋プロジェクトの中で、タラ号に乗船する科学者たちは世界のサンゴ生態系の状態を調べました。2009~2012年の間、ジブチからマヨット、(仏領ポリネシアの)ガンビエ島に至るまで102か所を調査し、良好な状態にあることを確認しました。2016年、タラ号はアジア・太平洋で2018年まで調査を続けるために未訪問の地へと向かいます。セルジュ・プラーヌの説明によると、今回のサンゴ礁探査の目的は次の通りです。「ゲノム、遺伝子、ウイルス、バクテリアの特性といった環礁の隠れた生物多様性を解明し、周辺海域との比較ができるようにすることです。サンゴ群全体の多様性について十分に把握し、その多様性を理解したいと願っています。」また、「探査中、海面・深海でサンゴ礁のサンプリングを実施する予定です。」と語るのは、プロジェクトリーダーのロマン・トゥルブレ。「気候上の理由、人為的理由を問わず様々なストレス要因に対するサンゴ礁の反応も比較する予定です。」重要なのは、外的なストレス要因に対して十分抵抗できているサンゴ礁は多いものの、オーストラリアのグレートバリアリーフなど特にアジア・太平洋の多くのサンゴ礁は、海岸開発や海運業、工業などの影響に悩まされているということです。ストレス要因としては、汚染、橋の建設、防波堤建設、土地の埋め立て、漁業、乱獲、人口増加などが挙げられます。さらに、東南アジアには地球上で発見されたサンゴの半数以上が生息しています。特に、台湾から沖縄諸島の間、フィリピン・マレーシア間、インドネシアあるいはパプアニューギニアと南太平洋の間に集中しています。「もう1つの脅威として、沿岸水域の過度な富栄養化があります。窒素やリン酸塩、その他の施肥剤が多すぎると、海藻の成長は促されますがサンゴには害が生じます。」とセルジュ・プラーヌは指摘します。

気候変動を引き起こしている温度上昇も大きな脅威です。「あらゆる海洋生物の中でサンゴ礁は最も敏感です。海面水温がわずか0.5℃上昇するだけで、何十平方キロメートルにもわたるサンゴ白化現象という、目に見えて明らかな大異変が生じてしまいます。」と、モナコ科学センターの科学ディレクター、ドゥニ・アルマンは警告します。サンゴの健康について知り尽くした専門家ドゥニはこう指摘します。「島国キリバスのテブア・タラワ島やアバヌエア島など、すでにいくつかのサンゴ礁の島が水面下に沈んでいます。また近い将来、ツバル、ミクロネシアの小島、マーシャル諸島、モルディブなど、危機に瀕する島が他にもあります。」私たちには島々やサンゴ礁を注意深く見守る必要があるのです。

 

ドゥニ・アルマン