私たちの共通のプロジェクト、海洋

© N.Pansiot Tara Expeditions Foundation

文:ロマン・トゥルブレ、「タラ号プロジェクト」事務局長

国際連合創設後70年近く経過し、新たな世紀が夜明けを迎えた現在、戦後の世界の指導者にインスピレーションを与えてきた人道主義的なビジョンはどこにいったのでしょうか?

過去15年間で、デジタル革命が起こり、また、アジアが政治世界で中心的な役割を担うようになりました。こうした出来事により私たちの世界観が変わり、指導者たちの短期的、中期的、長期的な考え方も、変化し続ける新たな課題に翻弄されてきました。どの大陸でもあらゆる種類の格差が日々拡大し続け、隔離、世界の分岐が進んでいます。

しかし、現在私たちが経験している気候変動や人口増加が、発展途上国や先進国のどちらに住んでいるかに関係なく皆に関わる問題であることは、常識的には言うまでもなく科学的見地からも示されています。これほどの困難に立ち向かうには、国際社会が幅広く協調して対応を講じることが必要です。

現状を考えると、海について心配するのは少数の熱烈な理想主義者の仕事で、不適切で馬鹿らしいとさえ思われるかもしれません。それでもおそらく、人類を結び付け、地球の4分の3を占めるこの広大な海は、私たちにとって豊かな発想の源と言えますし、海が自由の源であり共通財であるという、世界中の人々が共有する考え方こそが、歴史上稀にみる大胆な条約であった1982年の国連海洋法条約の調印を促したことは疑う余地がありません。

 

Romain Trouble

 

各自の向いている方向が同じでなくとも、海の象徴的な価値そして広大さが私たちを再び結び付ける役割を果たすと私は信じています。その大きさだけをとっても、私たちの吸い込む空気や体をつくるたんぱく質と同じように、海が地球上の生命に必要な条件を作り出す重要な役割を果たしていることは実に明白です。そして、グローバル経済にとっても不可欠な役割を果たしています。健康管理のためには皆を脅かす病気を防ぐことが必要なのと同じで、国連の諮問機関であるタラ号プロジェクトのような団体が、「公海」と呼ばれる国際的な海域に法的な地位を与えうる協定の締結に向けた交渉の開始を歓迎するのは当然のことなのです。

社会が十分に対応してこなかった海洋への数々の直接的負荷(乱獲、あらゆる種類の汚染、海岸線のコンクリート化)については、多くの科学者がすでに指摘してきた通りですが、私たちは現在、自らの活動が間接的かつより潜在的に生じさせる影響についての評価に着手しています。世界の海の酸素濃度減少、温暖化および酸性化について、より多くの研究、技術革新、取り組みが求められています。タラ号海洋プロジェクト中に実施されてきた科学的調査は、その他の研究成果とも合わさって、海の未来、すなわち私たち自身の未来についてより高い精度で予測し、今後力を合わせて克服すべき課題についてより多くのことを示す手がかりとなっているのは間違いありません。

タラ号やその探査を支える人々は皆、人類にとって特別な重要性を帯びた海の健康を保つことが、歴史的な分断を乗り越える共通のプロジェクトとなることを願っています。まさに21世紀のためのプロジェクトです。21世紀の私たちのチェレンジが目の前にあり、力を合わせた対応が必要とされています。さあ、私たちと一緒に、タラ号に乗船しましょう!