プレスリリース 2020年12月09日(水)
パリ協定採択から5年後の2020年12月12日、科学探査スクーナー船「タラ号」は母港であるロリアン(フランス)を出港し、新たな大科学探査を開始します。約2年間、実験船は南大西洋を7万キロ、南アメリカとアフリカの海岸沿い、南極まで移動します。Tara Océan(タラ オセアン)財団とCNRS、CEA、EMBLを含むその科学的パートナーによって考案されたこのミッションには、世界中の42の研究組織が参加しています。
今回は、進行中の地球規模の環境変化の黎明期に、海洋生態系の最も基礎である、海洋マイクロバイオーム(微生物叢)と、その未来を研究します。
海洋微生物は、海洋バイオマスの3分の2以上を占め、海洋において重要な役割を果たしています。彼らは人類の大部分を養う巨大な食物連鎖の最初の鎖です。これらの海洋生物は、地球規模で大気中の二酸化炭素を取り込み、その代わりに私たちが毎日呼吸する酸素を生産する、生態学的・経済的サービスの真の工場です。偉大な気候機械の重要な歯車として、この目に見えない世界の働きはまだほとんど知られていません。
「海洋マイクロバイオームとは、定義上、すべての海洋微生物(ウイルス、細菌、微細藻類、原生生物など)だけでなく、それらの環境との相互作用の全体を指しています」と、Tara Océan財団 エグゼクティブ・ディレクターのロマン・トゥルブレ氏は言います。「これは存在する微生物の単純な説明にとどまらず、このマイクロバイオームが全体としてどのように機能しているのか、またその効果がプラスチック汚染や進行中の海の温暖化に敏感なのかを理解したいのです。」
タラ号では、温度、酸素濃度、栄養素の有無、プラスチック汚染など、多くの環境パラメータを測定しながら、大規模なDNA配列 解析と画像化のための海洋マイクロバイオームを収集します。「この新しいミッションで得られた膨大なデータは、アーカイブ化され、科学コミュニティとオープンに共有され、海洋生態系の解析とモデル化のための世界的な取り組みに貢献します。」
“これまでのタラのミッション は 船が行く先々で一様にサンプリングを行い 『 誰がいるのか 』 を明らかにしていた。今回はミッション中のプロトコルを適応させて どのように機能しているのか 』 を理解していきます。」と、CNRS/ソルボンヌの研究者であり、ミッションの科学共同ディレクターでもあるコロンバン ・デ・バルガス氏は、 説明 し ます。Tara-GOSEE研究連盟と欧州連合(EU)から資金提供を受けたAtlantECOプログラムを介して約200人の科学者が参加しており、特に、主要な現象(河川や氷山による海洋受精、マイクロプラスチック汚染)やチリ沖のような貧酸素水塊(ひんさんそすいかい) の増加に対するマイクロバイオームのメカニズムと反応に興味を持っています。
より一般的には、この新しいミッションは、マイクロバイオームと気候を結びつける主要なメカニズムをより詳細に理解することができるだろうと、アントン・ドールンナポリ臨海実験所 (イタリア、ナポリ)の研究者であり、ミッションの科学的共同ディレクターを務めるダニエレ・ユディコーネは言う。
「私たちが扱う問題の大部分は、気候変動や海洋汚染であり、それらに対して海洋マイクロバイオームがどのように反応し、進化していくかに関連しています。したがって、このミッションが提供する回答は、気候予測モデルの改善であり、特に生物学的パラメータを統合することによって、その有用性 が証明される事を期待しています。 」
科学的な問題を超えて、Tara Océan(タラ オセアン)財団は、一般の人々や 子供達や若者を船上に招待して、海とその 保全の問題をよりよく理解してもらうことで、意識を高めるという使命を継続していきます。計画されている23の寄港地のうち、いくつかの寄港地では、科学チームが現地の研究者を対象に、海洋研究のノウハウや技術の研修を行います。
このミッションを通して、一般の人々は財団のデジタル・プラットフォーム上で人間と科学の冒険を追いかけ、 さまざまな国を発見し、海洋マイクロバイオームの有用性を理解することができます。
また、タラ号をきっかけに、世界各地で持続可能な開発の課題に取り組むために、タラ号クルーとテレビ会議を介してライブで交流する授業等を行います。
日本の次世代を担う子供達、一般の人々にも、Tara Océan財団日本事務局であるTARA JAPANが連携し、様々な行事を展開する予定です。
2020年12月12日は、新型コロナ感染症拡大防止の観点から、慣例通り一般の人々が集まってロリアン港から出航するスクーナー船を祝うことはできませんが、フェイスブックやインスタグラムで、ライブ配信を行います。
お問合わせ連絡先 :
Fondation Tara Océan/ TARA JAPAN – パトゥイエ由美子
: yumiko@fondationtaraocean.org