地球のために活動するスクーナー船、タラ号

サンゴ: 気候の記憶

© Porites lobata 4 Credit Lauric Thiault

2020/08/27

Tara Océan(タラ オセアン)財団がモナコ科学センター(CSM)及びフランス国立科学研究センター(CNRS)と協力して行ったタラ号太平洋プロジェクトで 収集されたサンゴサンプルの分析において、古気候学の分野では最初 の成果をもたらしました。 サンゴの骨格を解析したことで 、科学者たちは海面水温の経時変化を再構築できるようになりました。

このミッションでは、CSMとCNRSが科学的な調整を行い、科学探査帆船タラ号が太平洋を東西南北に航行し、 大規模なサンゴのサンプリングが行われました。世界のサンゴ礁の40%がこの地域に集中しています。2年半の航海により収集された35,000のサンゴのサンプルは、現在あらゆる角度から分析 されています。

40個の熱帯サンゴの骨格 の解析が古気候学の新たな発見につながる

Monaco Explorationsによって一部を資金提供されたこの分析は、6月23日のGoldschmidt Virtual 2020(地球化学に関する年次国際会議)において発表されました。フランス国立科学研究センター(CNRS)、原子力・代替エネルギー庁(CEA)、ヴェルサイユ大学(UVSQ)による気候・環境科学の共同研究ユニットLSCE(Laboratoire des sciences du climat et de l’environnement)の地球化学博士課程の マリーヌ・カネシ(Marine Canesi)氏は、古気候学に関する 研究とツールについて発表を行いました。

古気候学とは?

サンゴは成長の過程で環境の変化を記録し、それは過去の急激な 海水 温の上昇 による大規模な白化のエピソードを明らかにします。地球上の過去の気候条件を復元する ことによって、科学者が気候変動に適応するサンゴの能力を よりよく理解し、予測するための貴重な情報が得られます。

いくつかの氷河期と間氷期の研究は、陸成層、海洋堆積物 、極氷の分析を通して行われました。1950年代以降 、高性能な装置の開発により、 熱帯サンゴを含む様々な起源のサンプルの元素・同位体化学組成を高精度に測定することが可能になり ました。

「サンゴのコア」とは?

造礁サンゴ(イシサンゴ目)は、ポリプの群体による 石灰質の骨格を生成します。時間がたつにつれて、サンゴは成長していきます。いくつかの種の中にはハマサンゴやダイオウサンゴのように、環境の変化に対して高い頑健性を 示すものがあります。造礁サンゴの成長速度は種ごとに異なり、1年で数ミリ成長するものもあれば、数センチ成長するものもありあります。群体によって は数百万年経たものも存在していることから、長期にわたる気候の変遷を復元 することが可能になります。

科学者は 最近形成されたサンゴの生きている部分から、骨格の底の部分に至るまで、群体の縦方向に骨格のコアサンプルを切削採取します 。そのコアサンプルを使って科学者はそのサンゴが誕生以来どのような環境条件 で成長してきたのか 解明することができます。
各コアサンプルの 全 長 に対して 地球化学的な分析を行うことで過去の気候の経時変化を調べることができます ストロンチウム濃度/カルシウム濃度、そしてリチウム濃度/マグネシウム濃度の濃度比率は海面水温 の変遷を復元 する上で確かな指標(トレーサーあるいはプロキシーと呼ばれています)となります。 このように複数の指標を使う解析をマルチプロキシーと呼び 、より高い確実性で復元が が可能になり ます。

20171121_Tete_carotte_Diploastrea_heliopora@NPansiotダイオウサンゴ群のコア(ノウサンゴ)©ノエリエ・パンショ/Tara Océan(タラ オセアン)財団

サンゴが私たちに教えてくれること

タラ号太平洋プロジェクトの際に、パラオ諸島で ハマサンゴ(Porites)属とダイオウサンゴ(Diploastrea)属の熱帯サンゴから40個のコアサンプルが
採取されました 。そのコアの元素組成は、 Monaco Explorationsからの共同出資により、 LSCEのマリーヌ・カネシ氏によって分析されました。その研究は、先ず海面水温 に関する地球化学的トレーサーの新しいキャリブレーション(較正)を作成し 、その有効性が検証されたのちに、過去の気候の復元 に利用 されました。
19世紀後半からエルニーニョ現象(ENSO)により、パラオ諸島に急激な水温上昇が起きています。今回の研究では、それらに対してサンゴの高水温ストレスによる地球化学的応答に焦点を当てました。

Anomalies de température de l’eau de mer de surface à Palaos depuis 1880 à nos jours1880年から現在までのパラオ(北西太平洋)における海面水 温 (SST)。
これらのデータは海面水温 の急激な上昇 と低下 の期間を明らかにしています。

本研究の目的

過去数世紀にわたって、激しい海水温上昇 により熱帯サンゴの健康状態が悪化し、時には死に至 りました。このような出来事の古気候の復元 は、人間の活動がサンゴの生態系に及ぼす影響をより正確に予測するための信頼性の高いモデルを開発するのに役立ちます。したがって、数十年あるいは数百年にわたる 海面水温 を復元することが極めて重要です。

マリーヌ・カネシ氏の博士課程 は、LSCE の GEOTRAC チーム(GEOchronology【地質年代学】、Tracers【トレーサー】、ARChetometry【考古年代測定】)のエリック・デュヴィル(Éric Douville)博士、およびモナコ科学センターのステファニー・レイノー(Stéphanie Reynaud)博士が共同監修しています。