タラ号は地球温暖化の影響を受けたサンゴ礁から1万5,000ものサンプルを採取

© TARA OCEANS SAINT BRANDON (Cargados Carajos)

タラ号は太平洋を横断するため2016(平成28)年5月に出航し、最近になってサンゴ礁の探査は中間地点に到達しました。スクーナー船タラ号は既に15か国を訪問し、東西約5万キロを航海しました。タラ財団が始めたこの重要な探査の旅によって、科学者はこれまで1万5,000以上のサンプルを採取し、潜水した数は2,000回に及びます。サンプルの分析がちょうど始められたところで、分析によってサンゴ礁の生物多様性、健康状態、そして気候と環境の変化への適応力に関するより深い理解が得られるでしょう。タラ号に乗船した科学者たちは太平洋に亘る地球規模でサンゴの白化を観測し、いくつかの場所ではサンゴの表面の約30%から90%が影響を受けていました。タラ号太平洋プロジェクトはフランス国立科学研究センター(CNRS)、原子力・代替エネルギー庁(CEA)、モナコ科学センター(CSM)、パリ人文科学研究大学(PSL)を始め、多くの公的・民間団体によって支援されています。

タラ号は2016年5月に母港であるロリアンを出発し、タラ号太平洋プロジェクト2016-2018は全航路10万キロの内、中間地点までやってきました。このプロジェクトの初年度にタラ号は太平洋を東から西へと横断し、最も距離の離れた南太平洋にあるサンゴ礁に到着しました。乗船している科学者たちは採取が予定されている3万5,000のサンプルの内、1万5,000個を集めてきました。私たちはこのサンプルの分析によって、サンゴ礁の生物多様性がどのようにして環境の変動に直面しているのかということについて、より深く理解することができるようになるでしょう。

 

2016年1月にはイースター島西部に位置するデュシー島(イギリスの海外領土)に、そして翌月にはモーレア島(フランス領ポリネシア)に到着し、タラ号の船員は地球温暖化による強い影響がみられる最初のサンゴ礁を観測しました。

 

Millepora Platyphylla 2 _ Credit Lauric Thiault

 © Lauric Thiault / Tara Expeditions Foundation

 

タラ号は多くのサンゴ礁が白化する現象を目撃

このプログラムの主たる目的は、現在の環境破壊に対するサンゴ礁の生物学的な反応を調査することであり、タラ号の船員によって以下の事実が確認されました。 ・ポリネシアではトゥアモトゥ諸島のいくつかの島々で、30%から50%のサンゴ礁が白化していました。 ・いくつかの場所では、サンゴの表面の約70%に白化現象が見られます。同じような現象が、ピトケアン諸島でも確認されました。 ・ウォリス島とフツナ島のサンゴは、比較的良い状態が保たれています。 ・北の地域に行くほど、水温がより温暖なのにもかかわらず、サンゴ礁は白化現象から免れてはいませんでした。例えば、沖縄のサンゴ礁の70%が白化の影響を受けています。

 

ポリネシアのように人口密度が低い地域では、このようにサンゴが変質する要因となるものは水温の上昇だけです。「水温が高くなるほど、そして高水温にさらされる時間が長くなるほど、白化現象はよりひどいものになる」と話すのは、フランス国立科学研究センター(CNRS)の研究員で、タラ号プロジェクトの科学ディレクターであるセルジュ・プラヌ(Serge Planes)です。これら2つの要因が合わさることで藻類とサンゴの共生が断絶され、水温が上昇した状態が3週間を超えた段階でポリプは死に至ります。セルジュ・プラヌ曰く、「例えばエルニーニョ現象のように、気温の上昇による気象現象は1度限りないし周期的なものとは言えなくなっています。現在海は地球規模で温暖化しており、夏はより暑くなります。気象現象の頻度は増し、その時間的間隔も短くなっていくでしょう」。

 

タラ号プロジェクト事務局長のロマン・トゥルブレ(Romain Troublé)はこのことからも、「パリ協定で制定された気温の上昇を2度未満に抑える枠組みは、海洋生態系にとっては全くもって十分であるといえない」と考えます。

 

Coral survey in Ducie Island _ Credit Pete West - Bioquest Studios

© Pete West / Bioquest Studios

 

サンゴ礁は次の10年間で大きく変化

「タラ号プロジェクトが集積したオリジナルのデータによって、微生物多様性が種の抵抗力の要因となっているかについて、私たちは信頼のおける情報を得ることができるでしょう」とモナコ科学センター(CSM)のディレクターで、タラ号プロジェクトの副科学ディレクターであるドニ・アルマン(Denis Allemand)は話します。今日、サンゴの種類が豊かなのは、条件が理想的だからと言えます。将来、環境は他種の発達に有利なものへと変化していくでしょう。生態系が変化する現在の状況の中で、種の適応力は進化しています。これはサンゴ礁の生態系が、次の10年間で大きく変化することを示唆しています。

 

1万5,000ものサンプルを採取

プロジェクトの初年度で、タラ号のチームはサンゴに関連した微生物の多様性を解明するため、17か所でおよそ1万5,000個のサンプルを採取しました。また科学チームは乗船中にDNA分子の種類を確認できる、元のDNA配列決定の新しい技術で実験を行いました。「大きなUSBキーと同じサイズの、MinIONというDNAシーケンサーによって、船内で高い情報量のDNA配列決定実験を行うことができました。これは必要な時に素早く種を確認する際、非常に役立ちます」と フランスのゲノムセンターGenoscopeのクウェンティン・カラデック(Quentin Carradec)は話します。

 

フランスでは、ゲノムセンターGenoscopeのチームが微生物の多様性-全ての微生物がサンゴ礁、そこに住む魚、あるいはその周辺の海水と連関していること-を特徴付けるため、ゲノムの配列決定実験を始めました。最初の配列決定実験でサンプルが非常に良い状態にあることがわかり、タラ号のチームが使用したサンプルの保存および輸送方法が十分満足のいくものであったということが実証されました。

 

Tara Pacific spi _ Credit Francis Latreille - Tara Expeditions Foundation
© Francis Latreille / Tara Expeditions Foundation

 

微生物の環境の変動に対する反応を理解するため、微生物の生態を研究

私たちはタラ財団がプロジェクトを通じて集めたサンプルコレクションによって、実験の場で国際的に使用することを目的とした、他に類のないデーターベースを作ることができます。長期的な視点で考慮すると、科学者たちはサンゴ礁を比較し、サンゴが環境破壊に抵抗する能力を見分けることができるようになる他、サンゴの生態系と生物多様性が互いに活性化し合う関係にあるという仮説を検証することができるようになるでしょう。この共生はサンゴ礁によって育まれる微生物の多様性と、サンゴ種の多様性によってもたらされるのかもしれません。遺伝子の多様性に関する研究はサンゴ礁に住む、あるいはその周辺に居る微生物の全てのゲノムを発見し、また微生物のストレス、特に地球温暖化に関連するストレスへの反応を見つけることを目的にしています。

 

コーラル・トライアングルの中心に居るタラ号は、探査プロジェクトの後半へ

スクーナー船タラ号は現在、グレート・バリア・リーフに来ています。そして数日後、数か月後にはニューカレドニア、ソロモン諸島、パフアニューギニア、インドネシア、フィリピン、パラオ、中国、そして台湾へと航海を進めます。そこで研究者たちは、計画されているサンプルの採取を行う予定です。タラ号は著しく豊かな生物多様性をもつ地域を訪れる予定で、いくつかの地域には未だ研究を行ったことが無い場所もあります。中国が良い例でしょう。東へと戻り、科学者のチームはクリッパートン島で周辺的なサンゴ群体に焦点を当てていきます。ラパスでは、東太平洋で最北にあるサンゴ礁を観測します。そしてタラ号は2018(平成30)年10月にロリアンへと帰港し、このプロジェクトは終焉を迎えます。